2006年01月09日

『4TEEN』石田衣良(新潮文庫)

『4TEEN』は、特異だけど特異じゃない社会の断片を、少年たちの視点から追ったストーリー群といった内容で、物語の王道ともいえる、かけがえのない少年たちのきらびやかな時間を描いた物語。

あらがえない厳しい現実に直面しながらも、大切なものがなんなのかを知っている少年たちの姿や、淡々とした静かに流れるような雰囲気は読んでいて心地好いものだった。

読んでいる途中は、やや掘り下げがたりないというか、最も辛く難しい部分は避けているなーという感じもあったけれど、読んでいて鬱々とするよりも、淡々とした爽やかさが残ってよかったと読み終えたあとは思えた。

こういう少年たちの時間を描いた作品は小説でも映画でもたくさんあるけれど、たとえ似たようになっていても、やっぱり面白さや感動を与えられることが多い。いろいろな作家のこういうものが読みたいなと思う。


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2005年12月26日

『博士の愛した数式』小川 洋子(新潮文庫)

心温まるストーリーという予備知識だけで手にとったため、博士の記憶が80分しか続かないという設定が出てきたところで、歩いている際に後ろから襟を引っ張られるようなつまずきを覚えた。

病気や死がキーワードになった話は嫌いじゃないけど、ちょっと食傷気味な気分があったからだ。

でも、読み進めるうちに、ふんわりとした物語の流れに、そういう気分もなくなった。特別なことのない毎日を追っていくことが楽しく、本を開いてからそのまま最後まで読み通すことができた。ルートが優しい人間に育ってくれたのがよかった。

ただ、他の感想でグロいだのなんだの文句を書いておきながら勝手な話だけど、なんとなく物足りなさも少し残った。3冊しか読んでないから比べようもないけど、他の書評にあるような、この本が小川洋子で1番ってことはないような気もした。

ところで、読んでいる途中、博士と家政婦さんはいつ結婚するのかなーと考えていたんだけど、こういう見方って、二人の姿を見てヒソヒソ噂話を立てる周囲の目と同じだよなーと、あとで格好悪さを感じた。

愛情(心の繋がり?)を短絡的に結婚などの二人の関係に結びつけちゃうのは、無粋というか、さもしいというか。自分のことながら、つまらない人間だなー。

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2005年12月18日

『蝿の王』ウィリアム・ゴールディング(新潮文庫)

5歳〜12歳くらいまでの少年たちが、無人島に漂着して生き残るという、王道のストーリー。

十五少年漂流記』にあるような達成感や人間成長ドラマ的な部分はなく、少年たちの無知やプライドが交錯し、次第に人間関係が崩れ、そして最後は殺人にまで発展していくという、ある意味リアルな物語。

どちらかというと、『漂流教室』や『ドラゴンヘッド』の方が近いのかも知れない。

少年たちの年齢が低過ぎるのと、展開が早いため、それほど漂流の危機感や、展開の起伏が感じられないのが残念だったけれど、結末の皮肉さは結構秀逸なのかなーと感じた。

追い詰められた人間社会はこんなものかなーとか、自分がいたらどうなっただろうなーなどと考えながら読むとおもしろいです。



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『誘拐の果実 (上下)』真保 裕一(集英社文庫)

今回はおもしろかった。犯人が誰なのかとか、予想を裏切るというような展開が繰り広げられる…というものではなかったけれど、結末まで一気にサラッと読むことができた。

前回読んだものが読んだものだったせいもあるんだろうけど、今回はそれほど殺伐とし過ぎずに、そして最後の円団も納得しやすいものだった。

ただ、予想通り過ぎるというのと、刑事を中心とする人物がいまひとつ書き分けられていない感じで何回かページを振り返りさせられた点がやや残念な気もする。



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2005年11月21日

『発火点』真保 裕一(講談社文庫)

帯に書いてある“ミステリー”自体はオマケで、努力をせずに家族や社会に責任をなすりつけるという、ドコにでもいるタイプの人間が、塞翁が馬的なことを繰り返しながら、ちょっと成長? する話。

読み終わってみれば、真保さんにもまあこういう作品もあっていいだろうとは思ったけれど、いつスリリングな展開になるんだろう? という、期待を抱き続けながら読んでしまったため、鬱鬱とした陰気な展開に終始したことにちょっと辟易した。

人としての弱さは魅力になることも多いのだけれど、この主人公のように鼻につくようないい加減さは読んでいて楽しいものではない。ストーリー自体も、なんかどこに面白みを見つければいいのかという、釈然といかないままで終っており、一応のハッピーエンドらしきものも、また時間が経てば繰り返すんじゃない? って感じの成行だった。

この本も含めて、真保さんの主人公はよく言えば人間らしいんだろうけれど、読み物として見たときは、もう少し改善して欲しいなーって人ばかりだ。



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2005年11月14日

『きよしこ』重松 清(新潮文庫)

うまく気持ちを伝えられないもどかしさは、誰もが感じたことのある悲しさだろうと思う。

自分自身はもちろん、大切な人も傷つけてしまう悲しさは、見えないトゲのように、ときおり表れてはチクチクと心を刺す。

このうまく気持ちを伝えられない悲しいもどかしさは、他人が推し量れることではないが、吃音ならばなおのこと大きいのだろうと思う。

しかも、その吃音の原因を招いたのが大切な人の心遣いがきっかけに出てしまったものだとしたら、もどかしさを感じる度に、より深い、やり場のない悲しみに包まれるのかもしれない。

ただ、だからといって不幸の中で生き続けているのかといえば、それはやはり違うのだろう。何が違うのかは、残念ながらよくわからないけど。そもそも幸せが何なのかという延々と続く長い階段を上らなきゃならないからだ。

でも、この「きよしこ」を読むことで、分かるのではなく、なんとなくそれを感じることができたような気がした。

これまでそれほど多くの重松作品を読んでいるわけではないけれど、今回読んだこの「きよしこ」は一番好きな作品になるかもしれない。

『リクナビ』きよしことは関係ないけれど、重松 清が載っていたのでリンク
http://next.rikunabi.com/rebuke/s_shigematsu_3.html

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2005年11月06日

『燃えよ剣 (上下) 』司馬 遼太郎(新潮文庫)の感想

あってないようなブログだけれど、これまでいくつかの本の感想を書いてきたのだから、読んだ本の感想はせっかく(?)なので今後もできるだけ書いていきたいと思う。けれど、書こうとパソコンの前に向っても、感想が書きにくい本というのがある。

理由は本によっていろいろだけれど、たとえばこの『燃えよ剣』もそういう本だ。「土方さん格好良い!」という感想が前に出てきてしまって、いまいちどう書いていいのかわからない。単に文章を書くのが苦手だからといったらそれまでなんだけれども、ホント土方さん格好良いで感想が終ってしまう。

歴史的にどんな意義があったのかとか、結果として何ができたかというような、掛け値に対して利益を求めるような人の世の中で、信念を貫き、一己の存在として潔く散っていった土方の、まざまざとした生き様がえがかれている作品……

というようなもっともらしい(?)感想を書こうとすると、体裁だけで何か読み終えた感想と少し違う気がする。やっぱり、とにかく、土方さん格好良い作品でした。


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2005年10月19日

『天皇(エンペラドール)の密使』丹羽 昌一(文春文庫)の感想

『天皇の密使』は、1914年のメキシコ革命期のさなか、一人の若い下級外交官が日本人移民のために命をかけて奔走したという物語。先日テレビで放映された杉原千畝の「六千人の命のビザ」を少し思い起こすような、実話をもとにした作品だ。第12回サントリーミステリー大賞(2003年に20回をもって中止)の、大賞受賞作でもある。

「六千人の命のビザ」に少し似ていると書くと、感動物語なのかと思う人もいるかもしれないが、似ているのは一人の外交官が信念と責務を貫き、多くの人を救ったという点で、テイストはだいぶ異なってる。こちらは冒険活劇にミステリーを混ぜたような内容になっており、主人公が革命軍の指導者と渡り合い、謎の殺人事件を解決し、移民を戦火に覆われた地から救い出すというものだ。

上のような紹介だけ見ると、ちょっとおもしろそうと興味を持つ人もいると思う。そう、実際に舞台や設定は非常におもしろかった。ところが、残念なことに、この小説は素材が生かしきれずにまとめられていた。巻末に掲載されている賞の選評者のコメントも、少し著者をフォローしてあげたくなるような辛辣なものばかりだったが、まあ、仕方ないだろう……と思ってしまうものだった。

そのため、この小説を読んで一番強く思ったのは、「誰か別の人がこの設定で書いてくれないかなー」というもの。この小説がどこまで実話なのかはしらないけれど、素材としてはとてもおもしろものだと思う。実話をまとめた本はあるのかな?

ところで、この小説や先日の「ドミニカ移民訴訟」のニュースを見て、改めて明治・大正期に多くの移民が行なわれているのを知った。ハワイやアメリカ、ブラジルだけでなく、アルゼンチンやペルー、ボリビアなどの各地に移民が行なわれていたらしい。

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2005年10月18日

『親指さがし』山田 悠介(幻冬舎文庫)の感想

以前読んだ『リアル鬼ごっこ』より、かなりうまくなっていた。「恐い」という表現をそのまま「恐い」と表したり、会話でストーリーを進めようとしたり、語彙が稚拙過ぎたりと、技術的に貧しい部分は多かったけれど、読み終えた感想としては、今回はけっこう楽しんで読めた。

ただ、設定がおもしろかっただけに、もっと文章のうまい人ならエンターテイメント作品としてもっと楽しめたんじゃないかなという感想も持った。『リアル鬼ごっこ』のときもそうだったけれど、山田悠介は題材自体は悪くはないと思う。読んでいないけれど、『Aコース』あたりも、背表紙や帯だけだと興味をひかれるものがある。だから、おそらく本屋で思わず手に取ったり、買ってしまった人も多いんじゃないかな(実際『リアル鬼ごっこ』は買った時の帯に20万部と書いてあったけれど、先日本屋で見たものは40万部になってたから、買ってしまった人が多いんでしょう)。

このように褒めるようなことを書いておいてなんだけれども、人に薦めるかどうかは微妙なところ。読書数が多い人や文学が好きな人、あるいはマンガとかを見ない人は耐えられないかもしれない。でも、電車で読みはじめたら、下車した駅のゴミ箱に投げ捨てたくなる『リアル鬼ごっこ』とはだいぶ違っていると思う。ヘタなことはヘタなんだけど、成長がうかがえるだけに『リアル鬼ごっこ』の連想だけで切って捨てるのは早計かもしれない。

ちなみに、最初に技術的に貧しいと書いたけれど、この文庫通してもっともくだらなかったのは巻末の解説。中森明夫とかいうコラムニストが書いているんだけれど、低俗過ぎて読むにたえない。山田悠介をフォローするつもりで書いんだろうけれど、主対象となる高校生あたりにおもねっているのか何なのか、小説の質を下げる役目しか負っていない。言葉の使い方を除いても非常に醜い文章だった。


最後に大まかなあらすじ
女の子が「親指さがし」という遊びを持ちかけたことが発端となる物語。「親指さがし」は、無残に切り刻まれて殺された女性の、親指だけが見つからないという事件があり、その親指を探しにいこうというゲームだ。その肝試しに似た、子ども同士のたわいのない遊びに過ぎなかったはずなのに、一人の女の子が消えてしまう。女の子が消えてから数年が経ち、20歳を迎えた主人公たちはその少女を探しに行く・・・。


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2005年06月24日

『疾走(上下)』重松清(角川文庫)

最初に書店の新刊コーナーに並べられていたときは、背表紙の説明を読んだだけで、そのまま元の位置に本を戻した。“中学生”“少年”“苦難”“犯罪”という単語を見て、「重松さん、またか…」と思ったからだ。

でも、改めて書店を訪れたときに結局買ってしまった。重い内容の本はできれば避けたかったんだんだけど、仕事で説明書的な文章ばかり読んでいる日が続いていたから、読み物が読みたかったのだ。しかし、読みはじめると、今回は他の重松作品に比べると淡々とページを進めることができた。

主人公を「おまえ」と呼ぶ語りべがいたからなのか、不幸が連鎖していくのが予想できていたからなのか、或いは睡眠不足が続いていたからなのかわからないけれど、内容の重さの割に気分が上下させられることが少なかった。これは悪い意味じゃなくて、読みやすかったという表現の方がいいかもしれない。

1つの終焉と新しい息吹…というドラマや映画のようにわかりやすい結末の付け方も、ありがちではあるけれども、すんなり読むことができた。ラストシーンのこぼれるような明るい日差しの風景も目に浮かべることができたし、読後感も悪くはなかった。

だからおもしろかったと言えるんだけれど、人に勧められるかというと、ちょっとどうかなーと迷う。淡々と読めたのは個人的な感想で、別の重松作品とか、重い内容の本を読んでいないとたぶん辛いと思う。読み終わったあとに疲労感がどっと残るんじゃないだろうか。

ちょっと内容に触れてしまえば、同じように兄弟の犯罪を背負って生きる少年の物語でも、石田衣良の『うつくしい子ども』とは全然違う。『うつくしい子ども』は少年が辛さを乗り越えていく成長や強さを感じるタイプの読み物。『疾走』は少年が堕ちていくとか、どうのこうのというよりも、人間や社会の醜さ…人間の存在って必要なの? 的な感じが頭によぎるタイプだからだ。

『疾走』は読みごたえあるし、それでも生きていかなきゃならない人間はなにをすればいいのか…というようなこと考えることもできるし、おもしろいと思うんだけれども、読みたくないって人も多いかもしれない。


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2005年06月03日

『地下鉄に乗って』浅田次郎(講談社)

浅田次郎の本はこれまで読んだことがなく、知り合いが読んでいるのを見かけなければ、今後も読む機会はなかったかも知れない。ともかく、今回はじめて読んでみて名が知られているだけあるなと、素直に感心させられた。

ページをめくっているとすぐに話しに引き込まれ、しおりを挟んで置いておくと、ちょっとした気がかりが晴れないように続きが気になった。先の展開がどうなるかわからないというよりは、物語を読みたいという感じだった。

ただ、最後まで読み終えてみると、主人公の性格の分、本の評価を下げざるを得ないのが残念だった。読む人によって変わるとは思うけれど、ボクには身勝手なオッサンにしか映らなかった。まったく、どの作家の主人公もロクなヤツいないなーと、なんかしみじみ思ったくらいだ。

これでは褒めているんだか、けなしているんだか自分でもわかりづらいけれど、一冊の本としては十分おもしろかったといえた。こういう主人公がいない、別の本を読んでみたいと思った。

ところで、読みはじめてからずっと気になることがあった。この『地下鉄に乗って』と以前読んだ『流星ワゴン』の展開が、かなり似ていたことだ。断片的に過去に遡っていく主人公が、これまで見失っていたことや避けていた事実に気付いていく様子、そして父と子の愛憎の姿など、ある意味オマージュなのか? と思ったくらいだった。まあ、でも、どちらがよかったかと考えると、『流星ワゴン』の方が感動できたかなと思う。若干贔屓目があるかも知れないけれど。
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2005年05月20日

『劫尽童女』恩田陸(光文社)

読み終わったあとに抱いた感想を一言で表すと、「これは失敗だろ……」というものだった。

恩田陸は好きな作家なので、読む前に期待を持ち過ぎたということもあるだろうし、読んでいる最中もどこかで期待通りの展開に進んでくれるだろうという救いを求め過ぎたのも悪かったのかも知れない。

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2005年05月01日

『生命40億年全史』リチャード・フォーティ(草思社)

地球上に誕生した40億年にわたる生命の歴史を辿った500ページあまりの本書は、おもしろかったといえばおもしろかったんだけれど、それよりもよく眠れたな…という感想の方が強かった。

恐竜の話が綴られた章の冒頭で、著者自身が『生命の歴史をめぐるごく一般的な認識は、世界は緑色の原始スープのようなものから一気に恐竜へと進み、それが(謎めいた)絶滅をとげると、片方の肩から毛皮をまとい、棍棒を携えた人間へと世界はゆだねられた、というものだろう』と書いているけれど、その認識は間違っていないというか、一般人には藍藻や蠕虫なんかの話がずっと続くのはやっぱり辛かった。

恐竜に興味のない人だって、読んでいて恐竜がでてくるとちょっとほっとするんじゃないだろうか。とにかく知っている生き物の登場が、読んでいて非常に待ち遠しかった。

書籍の値段に関わってくるから仕方ないのかも知れないけれど、登場する生物やモノに対して図版や写真が少な過ぎなのが一因なんだろうと思う。英国王立協会の科学公衆理解推進委員会を務めていたというのなら、もうちょっとがんばって欲しかった。この本を楽しんで読める読者層ってどいう人たちなんだろうと、しばしば考えてしまったくらいだ(通史として全体の漠然とした流れを捉えるって言うにもなんとなくね)。

ただ、本書の趣旨からは外れるけれど、フォーティさんの個人的な独白というか、学会や研究者間などの話はけっこう楽しめた。ハンマーとルーペを持って調査しているだけではすまない研究者という立場は、かなりストレスが溜まるみたいだ。



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2005年04月11日

『THE WRONG GOODBYE』矢作俊彦(角川書店)

帯に『日本語で書かれた、最も美しいハードボイルド探偵小説』と書かれていた。最も美しいというのが何を指しているのか分かりかねたけれど、酒と女とシニックなセリフとタフな男などなど、いわゆるハードボイルドなイメージは満たしていたと思う。

上のイメージが貧困と思われたなら、これまでロパート・B・パーカーぐらいしか読んだことがないということで勘弁してもらいたい。とにかく、ハードボイルドというジャンルなのはまちがいないだろうし、ハードボイルドが好きな人じゃないと、ちょっと、わからないんじゃないかという意を含んでいると、とってもらえればいい。

昔はパーカーの『初秋』をおもしろいと感じたけれど、去年読み直したきは違和感を感じることが多かった。いま読むとハードボイルドは少し時代がかった感じが残る。ロング・グッドバイにもそんな印象が残った。

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2005年04月10日

『陰陽師 -竜笛ノ巻 』夢枕獏(文春文庫)

草木や雨、季節の描写は相変わらず読んでいていい気分。あやかしや鬼が倒すだけの敵じゃないのがこのシリーズのよいところだけれど、さすがにちょっとパターン化している点が感じられつつもあった。それでも、これまでのシリーズと同様の質と展開で、好きな人なら文句はないと思う。

ところで、巻末に著者自らの『キマイラ』シリーズの紹介が書かれていた。『陰陽師』が楽しめるなら『キマイラ』シリーズも楽しめるとのこと。やはり『陰陽師』ばかりが先行している点に、著者自身も思うところがあるのだろう。

このように書いているボクも、他の作品は『上弦の月を喰べる獅子』をかなり昔に読んだ記憶しかない。格闘好きの知り合いが『餓狼伝』シリーズを暑苦しい熱意で語ってくれていたため、夢枕獏は格闘ものの小説家というイメージが根付いてしまっているのが一因だ。ボクはたいして格闘に興味はない。

なので、『陰陽師』シリーズを読むようになったのも、ありきたりだけれども、岡野玲子のマンガが理由だ。夢枕獏の正当(?)なファンから何事か言われそうだけれど、いまでも岡野玲子の方が好きだ。まあ、比べるようなことじゃないけれどね。

話がズレたけれど、せっかく著者自らが勧めているのだし、他の本も読んでみようかと、いまちょっと考えだしている。

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2005年04月09日

『武士の家計簿』磯田道史(新潮新書)

江戸末期から明治初期ごろまでの加賀藩士の家計簿ともいえる記録を元に、下級武士の日常の生活や、激動の時代を生き抜いてきた人々の姿を、まざまざとよみがえらせた一冊。

人に勧められて読んだのだけれど、想像以上におもしろかった。家計簿という生活をリアルに映し出す記録が、時代を超えて現代のボクらの姿にも通じるところがあり、“歴史を読む”というよりも、“人を感じる”という読み物となっていた。

そのため、この記録を残した猪山家が窮状、逼迫を乗り越えて成功していくさまはうれしかったし、また、最後の階段を踏み外すような結果は寂しく感じられた(それでも、その他の旧士族らと比べたら安定したものを得られたのかも知れないけれど?)。

高杉や竜馬、西郷などの小説の主人公になるような人々が時代をつくってきたのは確かなことだけれども、猪山家のような歴史に埋没してしまうような人々が、時代を支えてきたのも確かなことだと、改めて感じさせられた。
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2005年04月06日

『海辺のカフカ』村上春樹(新潮文庫)

おもしろかった。読み終えてわかりやすい形の答えがあるわけではないけれど、終わりに向っていくにつれ、なんとなくストーリーが腑に落ちていく、そういう感じの物語だった。いい意味で深く考えさせられるところがなかったのもよかったと思う。

実は、というほどのものではないけれど、ボクは村上春樹の本をこの『海辺のカフカ』で初めて読んだ。周りに村上春樹の本を持っている人が多かったため、そのうち借りればいいやと思っていたからだ。それに、周りが評価するほど手を出しかねるという、天邪鬼さも多少は影響していたと思う。

なので、今回初めて読んでみて、好きっていう人が多い理由はわかった。確かにおもしろかった。ただ、ペダンチックっていう言葉を知ってる大人や、背伸びしてみたい高校生とかも好きそうだなーという、ちょっと皮肉っぽいことも思ってみたりもした。

文学や哲学、あるいは教養的といったらいいのかな? ともかくそのあたりのカタカナの言葉は、もうずっと前に忘れてるので、いちいち辞書ひかなきゃならないのはメンドウだった。そんな言葉を日常的に使う環境にいないし、覚えていられるほど記憶力もボクにはない。

まあ、単語を切り取って書いているあたりが、ボクの浅はかさという感じがして、結局は皮肉というより知的階級へのルサンチマンなのかも知れない。とりあえず、村上春樹の本はまだこの一冊しか読んでいないし、他のいくつもの本をこれから初読できるということが、幸せであるといいな。

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2005年03月30日

『子どもが育つ魔法の言葉』(PHP文庫)

できるなら親となった人、なろうとしている人に読んで欲しい一冊。内容は教訓を述べたり、諭したりするようなものではなく、やさしく語りかける雰囲気をもっており、いろいろ考えさせられながらも、すらすら読んでいくことができる。

親になっていないボクが言うには僭越なことだろうけれど、自分が完璧な親だと言える人はそうそういないでしょう。この本の通りにすることは難しいだろうし、また、この本の通りにすることだけが全てではないし、その必要もないと思う。けれど、悩んだり、間違えたりしながら、親も子どもと一緒に成長していくということを、この本は教えてくれるのだと思います。

ただ、1つ難点を言えば、読み物として捉えたとき、同じ構造の文章が繰り返されるため、巻末まで一息に読むのはちょっと疲れるかもしれません。

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2005年03月29日

『ICO-霧の城-』宮部みゆき(講談社)

現実の延長線上にあるようなファンタジーは好きだけれども、ファンタジーファンタジーし過ぎた、架空の世界の物語というのはあまり好きじゃない。だからこの本のはじめに『いつだかわからない時代の、どこだかわからない場所でのお話。』と書いてあるのを見たとき、その先に目を移すかちょっと迷った。

でも宮部みゆきだし、せっかく借りてきた本だし…と読み始めた。最初はやっぱり興がのらず、30ページくらいで他の本を読もうか迷った。けれど50ページまでいくと視線が滑るように動き出した。その後はそのままの勢いで読み進み、あっさりと最後まで読み終えることができた。

驚きやハラハラする展開はそれほどなかったけれど、気になる点を引きのばすような書き方がうまく、興味をひきつけられながら読めたため、感想としては素直におもしろかったと思えた。結末はゲームか映画のようで、ちょっとありがちな印象を受けたけれど、あとがきを読んでその印象が素直に頷けた。というか、あとがきが一番驚いた。この作品はプレステ2でのゲーム『ICO』のノベライズ本なのだそうな。プレステ2を持ってないのでどうしようもないけれど、ゲームもやってみたくなった。


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2005年03月28日

『大西洋漂流76日間』S・キャラハン(ハヤカワ文庫)

水平線しか見えない大海原にポツンと1人捨て置かれる状況下では、通常、人は3日程度しか生きていられないらしい。食料や飲料の確保や波やサメに襲われる事故以上に、精神的な苦痛が最も厳しいものだという。

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