2005年10月19日

『天皇(エンペラドール)の密使』丹羽 昌一(文春文庫)の感想

『天皇の密使』は、1914年のメキシコ革命期のさなか、一人の若い下級外交官が日本人移民のために命をかけて奔走したという物語。先日テレビで放映された杉原千畝の「六千人の命のビザ」を少し思い起こすような、実話をもとにした作品だ。第12回サントリーミステリー大賞(2003年に20回をもって中止)の、大賞受賞作でもある。

「六千人の命のビザ」に少し似ていると書くと、感動物語なのかと思う人もいるかもしれないが、似ているのは一人の外交官が信念と責務を貫き、多くの人を救ったという点で、テイストはだいぶ異なってる。こちらは冒険活劇にミステリーを混ぜたような内容になっており、主人公が革命軍の指導者と渡り合い、謎の殺人事件を解決し、移民を戦火に覆われた地から救い出すというものだ。

上のような紹介だけ見ると、ちょっとおもしろそうと興味を持つ人もいると思う。そう、実際に舞台や設定は非常におもしろかった。ところが、残念なことに、この小説は素材が生かしきれずにまとめられていた。巻末に掲載されている賞の選評者のコメントも、少し著者をフォローしてあげたくなるような辛辣なものばかりだったが、まあ、仕方ないだろう……と思ってしまうものだった。

そのため、この小説を読んで一番強く思ったのは、「誰か別の人がこの設定で書いてくれないかなー」というもの。この小説がどこまで実話なのかはしらないけれど、素材としてはとてもおもしろものだと思う。実話をまとめた本はあるのかな?

ところで、この小説や先日の「ドミニカ移民訴訟」のニュースを見て、改めて明治・大正期に多くの移民が行なわれているのを知った。ハワイやアメリカ、ブラジルだけでなく、アルゼンチンやペルー、ボリビアなどの各地に移民が行なわれていたらしい。

posted by meme_jam at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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