2005年06月24日

『疾走(上下)』重松清(角川文庫)

最初に書店の新刊コーナーに並べられていたときは、背表紙の説明を読んだだけで、そのまま元の位置に本を戻した。“中学生”“少年”“苦難”“犯罪”という単語を見て、「重松さん、またか…」と思ったからだ。

でも、改めて書店を訪れたときに結局買ってしまった。重い内容の本はできれば避けたかったんだんだけど、仕事で説明書的な文章ばかり読んでいる日が続いていたから、読み物が読みたかったのだ。しかし、読みはじめると、今回は他の重松作品に比べると淡々とページを進めることができた。

主人公を「おまえ」と呼ぶ語りべがいたからなのか、不幸が連鎖していくのが予想できていたからなのか、或いは睡眠不足が続いていたからなのかわからないけれど、内容の重さの割に気分が上下させられることが少なかった。これは悪い意味じゃなくて、読みやすかったという表現の方がいいかもしれない。

1つの終焉と新しい息吹…というドラマや映画のようにわかりやすい結末の付け方も、ありがちではあるけれども、すんなり読むことができた。ラストシーンのこぼれるような明るい日差しの風景も目に浮かべることができたし、読後感も悪くはなかった。

だからおもしろかったと言えるんだけれど、人に勧められるかというと、ちょっとどうかなーと迷う。淡々と読めたのは個人的な感想で、別の重松作品とか、重い内容の本を読んでいないとたぶん辛いと思う。読み終わったあとに疲労感がどっと残るんじゃないだろうか。

ちょっと内容に触れてしまえば、同じように兄弟の犯罪を背負って生きる少年の物語でも、石田衣良の『うつくしい子ども』とは全然違う。『うつくしい子ども』は少年が辛さを乗り越えていく成長や強さを感じるタイプの読み物。『疾走』は少年が堕ちていくとか、どうのこうのというよりも、人間や社会の醜さ…人間の存在って必要なの? 的な感じが頭によぎるタイプだからだ。

『疾走』は読みごたえあるし、それでも生きていかなきゃならない人間はなにをすればいいのか…というようなこと考えることもできるし、おもしろいと思うんだけれども、読みたくないって人も多いかもしれない。


posted by meme_jam at 16:21| Comment(0) | TrackBack(3) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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疾走、を読んだ。
Excerpt: 重松清著「疾走」を読みました。 重い・・・あまりに重過ぎる。というのが率直な感想
Weblog: ヤサシイケド、ツライヨ。
Tracked: 2005-08-01 00:58

疾走
Excerpt: 疾走 重松 清 (著) とりあえず「上」を読み終える。著者は、中高生の微妙な心情を描いた作品が多く、どこかの中学、高校で、「夏休みの課題図書」に選ばれてそう。宗田理をちょっと現代っぽくしたよう..
Weblog: halblog
Tracked: 2005-08-25 08:40

疾走とホメるが勝ち!
Excerpt: 平積みされていて、どうしても気になる本があった。 漆黒の背景に口を大きく開けている焼死体の顔のような画。 しかも、 上下巻2冊組みの本で、一冊ずつ見ると顔が微妙に切れていてグロい。 ...
Weblog: お気楽極楽ブログ
Tracked: 2005-09-04 12:47
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